アワード
新千歳空港国際アニメーション映画祭2016のコンペティション作品としてノミネートされた作品のなかから、4人の国際審査委員による厳正な審査を行い各賞を決定いたしました。
グランプリ
アマング・ザ・ブラック・ウェーブス
監督名 : Anna Budanova
2016年 / ロシア / 0:11:10 / Studio ”Ural-Cinema”
スカンジナビアの海岸で起こった古代の伝説をベースにした物語。溺れ死んだ人々の魂が、海の動物へと姿を変えていく。ハンターがアザラシの少女の皮を盗むと、彼女は動物に戻れなくなる。少女はハンターの夫となるが、海を見つめ続けている。
Anna Budanova
アンナ・ブダノヴァはロシアの映画作家であり、グラフィック・アーティストでもある。エカテリンブルク生まれの彼女は、ウラル建築大学のアニメーション&コンピュータ・グラフィックス学科で学び、様々な作品で美術とアニメーションを手がけている。2013年、初作品The Woundがアヌシーや広島の特別賞を始め20以上の賞を受賞。2015年、JAPICによる東京でのアーティスト・イン・レジデンス・プログラムの三名に選出、Among the Black Wavesを完成させた。
日本グランプリ
SOLITARIUM
監督名 : 榊原澄人
2016年 / 日本 / 0:06:35
プラネタリウムもしくは半球の環境に上映するための作品で、作家の個人史、夢、想像上のビジョンを、永遠のループを繰り返す複雑な12秒によって探求する。それぞれのイメージは互いになんらかのかたちで関わり合い、はっきりとした始まりも終わりもない連鎖反応を見せる。ひとつのループが新たな無数の反復を作り上げていくのである。それぞれのイメージがタイムラグのあるいくつかの要素によって作られ、互いに干渉しつつ、視覚の複雑なジャングルを作り上げる。
榊原澄人
北海道浦幌町出身。長野県在住。Royal College of Art, MA Animation科卒業。
新人賞
わたしのシカな友達
監督名 : Ko Seung-ah
2015年 / 韓国 / 0:05:36
捨てられた動物たちのグループセラピーの会合で起こる、野生の鹿の楽しい物語。
Ko Seung-ah
1989年ソウル生まれ。背景美術を学び、2015年、韓国芸術総合学校を卒業した。
審査員特別賞
(ジェイン・ピリング)
MONKEY
監督名 : Shen Jie
2015年 / 中国 / 0:05:09
三匹の猿のうち、一匹が死んだ。
Shen Jie
シェン・ジェ(1989年10月26日上海生まれ)は 2012年に上海応用技術学院を卒業。現在は上海を拠点としている。
審査員特別賞
(クリス・サリバン)
ソア・アイズ・フォー・インフィニティ
監督名 : Elli Vuorinen
2016年 / フィンランド / 0:11:28
メガネ屋は、世界がはっきりと見えすぎることに疲れてしまった。
Elli Vuorinen
2011年にトゥルク・アート・アカデミーのアニメーション学科を卒業。『ベニーニ』(2009年にピーニャ・パルタネンとジャスミニ・オッテーリンと共同監督)と『タンブリング』という在学中制作の二作品によってアニメーション業界に広く認知された。3作目のSock Skewer Street 8(2013年)は卒業制作として作られはじめ、2013年のA-AIR(アニメーション・アーティスト・イン・レジデンス東京)で完成した。Sore Eyes for Infinityは4本目の短編作品となる。現在の彼女は、フィンランドのトゥルクにある制作スタジオPyjama Filmsにて、アニメーション監督、アニメーター、グラフィック・デザイナーとして働いている。
審査員特別賞
(チェン・シー)
エンプティ
監督名 : Dahee Jeong
2016年 / 韓国、フランス / 0:09:27
ある女性の部屋。記憶たちが埃のように蓄積しては消えていく。男がその部屋で時間を過ごす。その女性にまつわる記憶をもとに、無益なちょっとしたゲームをしながら。
Dahee Jeong
ソウルの弘益大学校でビジュアル・コミュニケーションを学んだ後、2012年、パリ国立高等美術学校でアニメーションの修士号を取得。修了作品のThe Hours of Treeは韓国のインディ・アニフェストでグランプリを獲得した。代表作Man on the Chairは2014年のカンヌ映画祭の監督週間で上映され、アヌシー国際アニメーション映画祭の短編部門ではクリスタルを受賞、世界中の90以上の映画祭で上映された。
審査員特別賞
(水尻 自子)
ビフォア・ラブ
監督名 : Igor Kovalyov
2015年 / ロシア / 0:19:15
Before Loveは我々の人生で起こる孤独、不理解、不和を問う作品だ。タイトルが示唆するのは、登場人物たちに起こる全ては未だに本当の愛ではないということだ。人間の欠点こそが、物語のドラマの結節点となる。誰もが不幸せになるための道を探っている。誰もが愛を探しているのだ。
Igor Kovalyov
イーゴリ・コヴァリョフは国際的に評価される映画作家、デザイナー、アニメーター、監督である。短編作品『アンドレイ・スヴィスローツキー』『妻は雌鳥』『窓の鳥』『フライング・ナンセン』『ミルク』は数多くの賞を受賞、アニメーションおよび映画コミュニティから賞賛を浴びている。ウクライナ・キエフ出身のコヴァリョフはモスクワの伝説的スタジオ「ピロット」の共同設立者である。このスタジオはロシアにおける数々の優れた才能を抱えており、それらの人々は現在ではクラスキー・クスポでデザイナーやアニメーターとして働いている。1991年、ハリウッドのクラスキー・クスポからの招待を受けて、同スタジオで働き始める。同スタジオの最初の長編作品『ラグラッツ・ザ・ムービー』を共同監督。その後、Aaahh!!! Real MonstersやDuckman、ラグラッツなどのテレビシリーズ監督やコマーシャル、インターネット短編も手掛けた。
ベストミュージックアニメーション
Olga Bell “ATA”
監督名 : 橋本 麦
2016年 / 日本 / 0:03:42 / INS Studio
オルガ・ベル「ATA」のミュージックビデオ。
橋本 麦
1992年生まれ. 武蔵野美術大学中退. 実験的なルックやジェネラティブな制作手法を得意とし, 映像作品からWebまで幅広く手掛ける。これまでにgroup_inou, Koji Nakamura, fhána等のアーティストのMV、フジテレビ・ノイタミナアニメ「すべてがFになる」のED映像などを手掛ける。第19回文化庁メディア芸術祭新人賞受賞. 現在, INS Studio.に所属。
観客賞
ボールド・フューチャー
監督名 : Paul Cabon
2016年 / フランス / 0:05:36 / WAG Prod
ハゲになるのは最悪だ。自分がそうなると知ってしまうのは、もっと最悪だ。
Paul Cabon
ポール・カボンはフランスのインディペンデント・アニメーション作家およびイラストレーターであり、Storm Hits Jacket(2014年)および『野生』(2009年)で知られている。彼の作品は、色と形態の強力な利用と鋭いユーモアセンスに伴われた新鮮なビジュアル・コンセプトに満ちている。ほとんど実験的といっていい動きをする人体は伝統的なキャラクター・アニメーションの法則を無視しつつ、それでいて彼自身のスタイルとは完璧にマッチしている。
キッズ賞
森のガードマン
監督名 : Māris Brinkmanis
2015年 / ラトビア / 0:12:13 / Animācijas Brigāde
森林管理官は散歩の最中、森に捨てられたゴミを見つける。ペットの犬や猫、ネズミは大怒り。管理官は今度は森林を汚染する人間を見つけてしまう。しかし、どうすることもできない。管理官は年寄りで、銃もコルクしか撃てないからだ。悪者は笑い、悪事を続ける。犬、猫、ネズミは森の動物達と団結して、悪者に目に物を見せる。その手段はとても賢くて、森はキレイになり、悪者は監獄入り。
Māris Brinkmanis
1975年9月29日、ラトビアのトゥクムス出身。1995年から97年まで、ノンプロの演劇監督のためのラトビア文化庁のコースを受講。1995年よりノンプロ劇場のBEDREにてディレクターとして働く。1997年より映画スタジオAnimacijas Brigadeにてアニメーターとして働く。2001年からは監督もしている。
新千歳空港賞
水準原点
監督名 : 折笠良
2015年 / 日本 / 0:06:41
戦後を代表する詩人であり、シベリア抑留の経験をもつことで知られる石原吉郎(1915-77)の詩「水準原点」を粘土に刻印、約1年にわたり記録した。
折笠良
1986年茨城県生まれ。茨城大学教育学部、イメージフォーラム附属研究所、東京藝術大学大学院映像研究科で学ぶ。2015年9月〜16年8月文化庁新進芸術家海外研修員としてモントリオールに滞在。
外務大臣賞
プラネモ
監督名 : Veljko Popovic
2015年 / クロアチア / 0:13:28 / Lemonade 3d / Krupni kadar, 3D2D animatori
惑星質量天体は、孤独な放浪者、銀河の歩哨である。惑星間移行の混沌のなか、太陽系からはじき出された天体、孤児の世界である。誰もが心を失って日々のルーティーンの周囲を回るこの社会において、そのシステムから飛び出してしまった人間には何が起こるのだろうか? ここは居住可能なゾーンではないと、すぐさま気づくのだ。
Veljko Popovic
ヴェリコ・ポポヴィッチ(1979年生まれ)は2003年にザグレブ芸術大学の絵画学科を卒業。1998年からコンピュータ・グラフィックスを使いはじめ、CGとアニメーションのスタジオであるLemonade3Dの共同設立者となる。スプリト芸術大学の映画・ビデオ学科の学科長を務め、コンピュータ・アニメーションを教えている。その作品は世界中の数々の映画祭で上映され、受賞している(アヌシー、ザグレブ、クレルモンフェラン、アスペン、広島、リーズ、シュトゥットガルト)。いくつかの映画祭では審査員もしている。
観光庁長官賞
レッドエンド・アンド・ファクトリー・プラント
監督名 : Robin Noorda, Bethany de Forest
2015年 / ベルギー、オランダ / 0:15:35
レッドエンドの親友レッドバックは森で赤唐辛子を探す最中、食肉植物が作った巨大な化学工場を発見する。そしてウツボカズラに捕まって、奴隷アリたちに肉工場へと拉致されてしまう。不吉な夢を見たレッドエンドはそれに気づき、親友を探し始める。ハエトリグサのトラップから金のハエを救い出し、肉工場をぶち壊し、レッドバックを解放し、奴隷アリを救出するのだ。
Robin Noorda, Bethany de Forest
ベサニー・デ・フォレスト(1966年生まれ)はオランダ・アムステルダム在住で、美術家、ピンホール写真家、映画作家として活動している。美術大学在籍中(ユトレヒトとアムステルダム)、ジオラマを作ってその後撮影するという手法を開発。その目的は、「リアル」かつ幾分不条理な想像的世界を作り出し、観客がそのなかで仮想的に彷徨えるようにすることである。見ているものが実物大の世界であり、実際に入り込むことのできる世界だというイリュージョンをつくり出すのである。
ロビン・ノールダはヘリット・リートフェルト・アカデミーで視聴覚デザインと写真、アニメーションを学んだ。NOS(オランダ公共放送基金)やToonderアニメーション・スタジオでの研修も行っている。それ以来、自らの制作会社Morphosisのためにデザイナー、アニメーター、映画作家、プロデューサーとして活動している。講義や指導、様々な教育機関の映画・アニメーション部門のためのアドバイザーとしても働いている。
北海道知事賞
LOVE
監督名 : Réka Bucsi
2016年 / ハンガリー、フランス / 0:14:33
どこか遠くの太陽系を舞台に、三章構成で愛情について描く短編映画。抽象的で俳句のような状況が、重力や光の変化によってもたらされるとある惑星の環境を明らかにしていく。この脈動する惑星は、様々なやり方で、その居住者たちを互いにひとりぼっちにしていく。
Réka Bucsi
1988年生まれのハンガリーのアニメーション作家。2008年から2013年までブタペストのMOME(国立モホリ=ナジ芸術大学)のアニメーション学科に所属した。卒業作品Symphony no.42は第64回ベルリン国際映画祭の短編コンペティション、2015年のサンダンス映画祭、第87回アカデミー賞にノミネートされた。2011年から2012年、デジタルでの映画制作訓練プログラムのEssembleに参加。2013年から2014年はASF(Animation Sans Frontieres)、ヨーロッパ・アニメーション・プロダクション・ワークショップに参加。デンマークのオープン・ワークショップのアーティスト・レジデンスにも参加した。パリのパッション・ピクチャーズのディレクターでもある。
ISHIYA賞
こにぎりくん
監督名 : 宮澤真理
2015年 / 日本 / 0:05:02 / NHKエンタープライズ
三角ボディにごま塩頭、元気なおにぎりの男の子、こにぎりくん。お友達のケロッケやペットのブロッコリーと、今日は何をして遊ぼうかな?
宮澤真理
1983年日本大学芸術学部美術学科卒業。2014年東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。2002年から食品でアートを追求するお絵かきお弁当を発表。銀座、梅田で個展開催。2007年よりJ:COMにて食品を使ったショートアニメを公開。
サッポロビール賞
ゴッサマー
監督名 : Natalia Chernysheva
2016年 / ロシア / 0:04:05 / studio pchela
敵対から始まり、いつしか友情と助け合いに変わっていく関係の物語。
Natalia Chernysheva
ロシアのスヴェルドロフスクに生まれ、ウラル建築大学にてグラフィックとアニメーションを専攻した。いくつかの作品において、アニメーター、デザイナー、美術にも関わっている。監督としてのデビューはSnowflake(2012年)。2012年から2014年までフランスのラ・プードリエールで学び、The Return(2013年)とTwo Friends(2014年、卒業制作)を監督した。Two Friendsは2015年の新千歳空港国際アニメーション映画祭で新人賞を受賞している。
北洋銀行賞
さよならバルタザール
監督名 : Rafael Sommerhalder
2016年 / スイス / 0:09:36 / freihändler Filmproduktion GmbH
かかし、嵐、壊れた足。貝殻に響く音。永遠のお別れ。
Rafael Sommerhalder
1974年、スイスのチューリッヒ生まれ。インディペンデントの監督およびアニメーターとして働いている。チューリッヒを拠点とする制作会社Crictorの共同運営者。2009年、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのアニメーション学科を卒業(修士号)。2000年、ECAL(ローザンヌ美術大学?Ecole Cantonale d’Art de Lausanne.)で映画監督コースの学位を取る。
北海道銀行賞
スリー・ダンサーズ
監督名 : Harry Rubin-Falcone
2015年 / アメリカ / 0:05:30
季節の移り変わり、そして自然における静かな動きの美にインスピレーションを受けたこの作品は、穏やかな環境が与えてくれる平和な時間の魔法を探っていく。それぞれのダンサー(池の夜ダンサー、秋の葉ダンサー、屋上の雨ダンサー)は、シンプルで静かだが意味に溢れ記憶されるべき経験に浸透する、儚い精霊たちの具現化である。それぞれのパートの音楽は、ダンサーたちの雰囲気に合わせて書かれたオリジナルである。
Harry Rubin-Falcone
ハリー・ルービン=ファルコンは幼い頃から音楽家である。大学ではコードに基づいた芸術を発見することで、彼の数学の才能とビジュアル・アートに対する愛の両方を活用できるようになる。ここへさらに音楽への情熱が組み合わさることで、2015年からミュージカル・アニメーションを制作しはじめる。視覚的なものと聴覚的なものを組み合わせることで、驚異・平和・相互関係の感覚を呼び起こす。
北海道コカ・コーラ賞
(オットー)
監督名 : Job, Joris & Marieke
2015年 / オランダ / 0:10:01 / Job, Joris & Marieke
子供を授かることができない女性が、ある少女の空想上の友達を盗んできて、夫にはそのことを秘密にする。その子供との生活が楽しいものとなっていくなか、女性と夫との距離が離れていく。わたしのともだちを返してと少女が言いにきたとき、想像力の力は、全員に共有される。
Job, Joris & Marieke
ジョブ&ジョリス&マリーキーはオランダのアニメーション/イラストレーション/キャラクターデザイン/音楽のスタジオ。その作品は、可愛くて、愉快で、詩的で、時に苛つかせるdisturbing。スタジオは2007年、ユトレヒトにて、ジョブ・Roggeveen、ジョリス・オプリンズ、マリーキー・Blaawによって設立された。コマーシャル、教育番組、ミュージックビデオ、短編の制作を行っている。そのすべての作品の音楽を担当するハッピー・キャンパーはジョブによるプロジェクトで、受賞も重ねている。当然のことながら、ハッピー・キャンパーのすべてのミュージックビデオは、同スタジオが制作している。2015年、A Single Lifeがアカデミー賞短編部門にノミネート。短編作品MUTEはオランダ国際アニメーション映画祭でのグランプリおよび観客賞を含む数多くの賞を受賞した。最も知られた仕事のなかには、ラッパーのGers Pardoelのためのミュージック・クリップI’ll Take You Alongがある。1700万回再生されたこのビデオは、オランダのミュージックビデオ史上YouTubeで最も視聴されたものとなっている。2012年、子ども向けのシリーズThe Tumbliesがリリースされ、ジョブ&ジョリス&マリーキーはコンセプトやキャラクター・デザインを担当している。このシリーズは、オランダ、イタリア、トルコ、インドネシアで放映されている。
よつ葉乳業賞
ダニーボーイ
監督名 : Simon Lynen
2015年 / ベルギー / 0:07:09 / School Of Arts(KASK)Ghent
ダニー・ボーイについてのドキュメンタリー。失敗と失望のポートレイト。彼はアーティストだが、バカでもある。
Simon Lynen
サイモン・ライネンはベルギー・ブリュッセル在住の若手映画作家。Dannyboyは初の短編映画で、現在は二本目に取り掛かっている。笑える映画を作ろうとしているが、たいていうまくいかない。現在はユーモアを理解しようと頑張っている。
ロイズ賞
やけどとほし
監督名 : 三上あいこ
2016年 / 日本 / 0:05:21 / 北海道教育大学
少女は自分のやけどを覗き込み、そのまま中に突入する。
少女と周りの自然は同じ世界に存在し、生きている。それらはどちらも大事なことだということについてのアニメーション。
三上あいこ
1994年北海道浦河町生まれ。2012年浦河高等学校を卒業。2016年北海道教育大学を卒業。現在、北海道教育大学大学院在籍。2014年頃からアニメーションの制作を開始する。